ヴィバルディの“冬”

f:id:masapune7:20191110135709j:image

 妻の実家に亡き義父の遺したオーディオとレコードがあります。クラシック好きな義父は、同じ曲でも、演奏家が違ったり、指揮者が違ったりと凝っていたようです。
私もクラシック音楽は大好きで実家に行った時には、レコードを聴いています。小部屋で一人大きな椅子に座り、ゆったり目を閉じ大音量で♪♪♪至福の時間です。
今日は、ヴィバルディの“四季”を春から順番に冬まで聴きました。
“春”は一番有名ですよね。春を待ち望み、喜びに満ちた小鳥のさえずりや様々な生き物の希望とその躍動を感じさせる素晴らしい曲です。
そして目を閉じて聴いていると、いつの間にか意識が別の世界に飛んでいき、聴いているつもりなんですが、実を言うとあっという間に”冬“がやってきました。
でも、この“冬”の第2楽章が素晴らしかった〜何が素晴らしいかというと、人間の内面的な安定と幸せが感じられるところです。
外では雪が降り積もり、家の中でパチパチ音のする暖炉の前で、ゆり椅子に深く座って編み物をしている老婆ーー小さな子供達は、家の中を賑やかに駆け回ってーー何故か老婆になっている自分ーーそんな想像をしてしまいます。
春は、喜びを内から外に向かって発散する力を感じますが、冬は心の内面に向かう深い充足感があります。

 

話は変わりますが、実家からの帰り道に車を運転していて、ある住宅街の交差点で信号待ちをしていました。すると、後ろから、ズンドコ聞こえる重低音。バックミラーを見ると、軽自動車のカプチーノ、二人乗りのスポーツカーから聞こえてきます。

運転手は50代くらいのオヤジで乗っているのは一人。赤いグローブにサングラスなんかして、いかにも正しい走り屋を醸していましたが、聞こえてくるズンドコのリズムが、モタモタしてロックぽくない。。

そして、本人が歌い出したあ〜音楽に負けず声もでかい。張り上げた声は、ど演歌ぁ!泣きのこぶしが耳に突き刺さりました。しかも、行き先は同じようで、走っても後ろからついてきます。

気になって、チラチラとバックミラーを確認していましたが、頭を振りながら相変わらず歌に酔ってます。次の交差点止まった時に、おとなしいと思ったら、タオルでフロントガラスや周りドアなどをせわしく拭いてました。間奏だったんでしょうね。なにかと落ち着きのない人だなあと思ったけれど、周りとは完全に切り離されていると思い込んでいる、至福のマイワールドな時間なんでしょう。

ヴィバルディに例えるなら、本人は“冬”のつもりでしょうが、周りの人からは、“春”。いや、“夏”ですね。外に向かって暑すぎる。。。

ようやく、後ろの車が別れて静かに。おもむろに、カーオーディオのスイッチを入れると、自分のミュージックボックスから、“ちあきなおみ”が流れてきました。私も同類だ。。。思わず苦笑い。